なぜスロットとテンポという概念を知らなくてはいけないのか?
バレーボールを行う上で、ディフェンス・オフェンスの両方に関わってくるスロットとテンポという概念があります。
今まで皆さんは、速攻の名前を A クイック・ B クイックなどと呼び、トスの高さをセミ・オープンなどと呼んでいるのではないでしょうか。
今のチームで通じ合っているのであればいいですが、新しいチームに入った時、そのような大雑把な概念ではチームごとにバラツキがあり、慣れるまでに時間がかかり、コミュニケーションに支障が出るでしょう。
しかし、テンポ・スロットという概念を全員が知っていれば、そういった支障がなく、戦略を立てる上でもスムーズにいきます。
スロット
スロットとは
スロットとはコートを横に 9 分割し、英数字を用いて、コートの空間位置を示したものとなります。
主に、アタッカーがどの場所で打つかをセッターと共有するために用いられる指標です。
スロットの番号は、セッターの場所を 0 として、左(レフト側)に向かって 1 〜 5、右(ライト側)に向かって A ~ C と番号をつけています。(下図参照)
スロットを用いるメリット
最初にも言いましたが、A クイックや C クイック、B クイック、センターバックなどの場所は、そのチームごとに若干のバラつきがあり明瞭ではありません。
そのため、新しいチームに入った時にコミュニケーションの障害となるのです。
このスロットという概念を用いることで、どこで打ちたいかが明確になります。
また、作戦を立てる上で相手スパイカーがどこから打ってくるのかを共有する際に、”レフトの選手が切り込んでくるよ” “センター回り込んで打つよ” だと選手間でズレが生じてきてしまいます。”レフトが切り込んで (スロット) 3 で打ってくるよ” “センター回り込んで (スロット) C で打ってくるよ” と話せばとても分かりやすいですよね。
これがスロットのメリットです。
テンポ
テンポとは、セッターのセットアップを基準としたアタッカーの助走タイミングのことをいいます。
トスの高さ、速さというわけではありません。
なぜなら、選手一人一人の打点、身長が違うためです。
打点が 3m の選手と 3m30cm の選手のトスの高さは違いますよね。
また、身長が 1m70cm の選手と 2m の選手では同じ打点に到達するまでの時間は少し違いますよね。
トスの高さ、速さを基準にしてしまうとなかなか説明しづらいのです。
テンポには 4 種類ありますのでお示しします。
・マイナステンポ:セッターがトスを上げる時にはすでにアタッカーが助走〜踏み切りを完成させている状態。
・ファーストテンポ:セッターがトスを上げるよりも前に、アタッカーが助走を開始する
・セカンドテンポ:セッターがトスを上げるとほぼ同時に、アタッカーが助走を開始する
・サードテンポ:いわゆるオープントス。セッターや他の選手が上げたトスを確認してから、アタッカーが助走を開始する。
これらのテンポは、主にアタッカーがどのタイミングで打つかをセッターと共有するために用いられる指標となります。
スロットとテンポの活用方法
まずはスロットの意識
攻撃を組み立てる上で、まずはスロットを意識しましょう。
まずは幅を意識しましょう。
良くない例を出してみましょう。
例) 攻撃が 3 枚 (前衛 2 枚・後衛 1 枚) の場合において、前衛のスロットが 5 と 1、
後衛のスロットが 3
攻撃がスロットの 5 〜 1 だけに集中しており、相手ブロックが 2 枚つきやすい
・後衛の選手をスロット C で攻撃させる
・前衛の MB の選手を A ~ C で攻撃させる
先程と異なり、ブロックの初期位置が分散されています。
攻撃の ”横の幅” を広げるだけで相手のディフェンスは崩れやすくなります。
例2) 攻撃が 4 枚 (前衛 3 枚・後衛 1 枚) の場合において、前衛の攻撃が 5 と 1 と C、
後衛のスロットが 1
・せっかく 4 枚攻撃があるのに、スロット 1 の攻撃が 2 つあること
前衛でブロックを釣っても、同じスロットの攻撃だと、相手ブロックはそのまま手を出していればワンタッチできる可能性が出てくる
・同じスロットの攻撃は選手同士の衝突により、ケガのリスクがとても高くなる
バックアタックもしくは MB のスロットを変える
例えば、MB のスロットを 1 のままにするのであれば、バックアタックはスロットを 3 か A にしましょう。
すると、ブロックはとてもやりづらくなることが見てわかるのではないでしょうか。
また、今度はバックアタックのスロットを 1 のままとして、MB のスロットを 3 か A にしてみましょう。
これもまた相手に的を絞らせづらくする攻撃にできているのではないでしょうか。
次はテンポの意識
スロットが意識できたら次はテンポを意識してみましょう。
例えば、スロット A と C の攻撃をするとします。
スロット C の攻撃はセカンドテンポ、スロット A の攻撃はファーストテンポで行おうとします。
せっかくスロット A でブロックを釣れたとしても、スロット C はゆっくりなテンポのため、ブロックが追いついてしまう
スロットの C も A もファーストテンポにする
特にこのスロット A と C の攻撃や 5 と 3 の攻撃をファーストテンポで行うと、ほぼ同じトスの軌道となるため、ブロックが騙されやすくなります。とても強い攻撃です。
まとめ
①まずはスロットの幅を意識する
②幅があるのであれば次は、スロットが被らない攻撃を意識する。
③スロットを意識したら、テンポを統一させよう